こんな、世間では「セフレ」と呼ばれるような関係

放置気味のケータイが久しぶりに鳴った。
『今から行くから』とだけの簡素なメールに、ドアの鍵を開けておく。
どういうつもりで来るのかは分からないが、決して短くは無い付き合いからの経験で、取り敢えず最低限の礼儀としてシャワーだけは浴びておこうと浴室へ向かう。

シャワーを終えて部屋に戻れば、そこには当たり前の様な顔をして家主を待ち構える時任が居た。
来て早々に男のベッドに躊躇いもせず上がり込むという割とストレートな要求に苦笑を隠せない。

「何だよ」
「いや、トッキーは正直だなーってさ」

まあ、嫌いじゃないけどね?そーいうの。

「滝さんだって、期待してたんじゃん。シャワーなんか浴びちゃってさ」

ふん、と鼻で笑う時任に案外正直なのは自分の方かもしれないと思う。
猫呼ばわりされる彼はその気紛れささえも猫そのもので。

「シャワーは?」
「いい。浴びて来た」
「やっぱりその気で来たんじゃない」

たまにふらりと現れては人を翻弄して帰って行く。
それでもギシリ、と軋むスプリングの音にすら興奮を覚える程度には身体を重ねている訳で。

「分かってるクセに」

こんな、世間では『セフレ』と呼ばれるような関係。