since 2005年8月12日
日中の陽射しは暖かくとも、まだまだ朝晩は冷え込む、そんな時期。
「さむ、」
起き抜けに感じた肌寒さに、まだ温もりの残るシーツに手探りでその体温を求めるも、見つける事が出来ずに重たい瞼を無理矢理引き上げる。
「……久保ちゃん?」
「あれ、おはよ」
うっかりすれば今にも閉じそうな視界の端に捉えたのは、バイトにでも行くのか着替えている久保田の姿。
「どっか行くのか?」
「うん、鵠さんのとこ」
「俺に断り無しで出掛けようなんざ、いい度胸じゃん」
「だって、良く寝てたし。起こさない方が良いかと思って」
そう言いながら温かさを確かめる様に頬を撫でる手を掴むと、その腕ごとベッドの方へと引き寄せる。
「こーら、離しなさいって。襲うよ?」
「襲ってみろよ、ほら」
どうぞ?と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる時任に一瞬、揺らぎそうになりながらも宥める様にその手を外させる。
「やっぱダメ。本当に行けなくなりそうだし」
「あっそ」
時任も言ってみただけなのか、久保田の手が離れた瞬間に冷気を遮断するように布団を被り直し、顔近くまで深く覆ってしまう。
「良い子にしてたら、帰りにいいもの買ってきてあげる」
聞いているのか聞いていないのか、静かな寝息をたて始めた時任に肩を竦める。
「オヤスミ」
Valentine's Day