since 2005年8月12日
遠くでシャワーを使う音が聞こえた。
時計を見て、そろそろ上がって来る頃かとリビングの暖房を切れば、暖かい空気がゆっくりと冷えていく。
「久保ちゃん、風呂あいたぞー」
「おかえり」
フローリングにペタペタと濡れた足音。
時任が隣に座ってソファーが軋んだ音をたてる。
「よく温まった?」
「おう。暑いくらい」
「そ」
触れ合う肩から伝わる熱と、心地良いシャンプーと石鹸の匂い。
誘われるままに腰に腕を回す。
「久保ちゃん、暑いって!」
「俺は寒いもん」
「はーなーれーろー」
言葉とは裏腹に嫌がる素振りを見せない時任に気を良くして、その肩に顔を埋める。
「久保ちゃん、服濡れる」
「うん」
濡れるねー。
なんて言いながら、湿った髪がシャツを濡らすのも構わず時任を抱き寄せる。
「……風呂、入れば良いのに」
「んー。後でね」
腹の前で組んだ両手を解かれて。
冷えた指に温かい指を絡められた。