白い部屋

ケータイとセッタと灰皿と読みかけの本を数冊。
勿論、吸う気なんて毛頭も無いけれど、ただ手元に無いと落ち着かないから。

持ち込んだ本を開いてみても、時任の様子が気になってとても読んでなどいられやしない。
やれる事は全てやった今、特に出来る事は無いけれど。

「なーに時任。ちゃんと居るよ」

なによりも、時折何かを求めるように頼りなく揺らぐ手を直ぐにでも取れる場所に居たかった。
その手はまだ酷く熱い。

「熱、全然下がらないねえ……」

そっと顔を覗き込んでみても、目は力無く閉じられたまま荒い呼吸を繰り返すばかり。
どうする事も出来ないまま、ただ握った手を両手で包み込んだ。