手×手 -hands- side T

「どこ行ったんだよ」

見知らぬ街の中。
物珍しさに視線を彼方此方へと彷徨わせている内に、あろう事か久保ちゃんを見失った。
半ば途方に暮れながら周りを見渡してみても、頭一つ飛び出た姿を見付ける事は出来ない。

家が分かんねぇガキでもあるまいし、このまま帰っちまうか。

ズボンのポケットの上から確かめるように鍵に触れた瞬間、何処からともなく嗅ぎ慣れた匂いにふと顔を上げた。
視界の端に捉えた影に誘われるように、ふらりふらりと付いて行く。

「どこ行くの」

不意に後ろから手首を掴まれた。
軽くよろめいて、久保ちゃんの腕の中。
そして自分が良く知る、セッタの匂い。

「あー、久保ちゃんだー」
「何それ」

久保ちゃんが呆れたように笑う。

「もう帰るよ」

お前放っておいたら、何処に行っちゃうか分かんないし。
子供みたいにしっかりと手を繋がれた。