since 2005年8月12日
「どこ行ったんだよ」
見知らぬ街の中。
物珍しさに視線を彼方此方へと彷徨わせている内に、あろう事か久保ちゃんを見失った。
半ば途方に暮れながら周りを見渡してみても、頭一つ飛び出た姿を見付ける事は出来ない。
家が分かんねぇガキでもあるまいし、このまま帰っちまうか。
ズボンのポケットの上から確かめるように鍵に触れた瞬間、何処からともなく嗅ぎ慣れた匂いにふと顔を上げた。
視界の端に捉えた影に誘われるように、ふらりふらりと付いて行く。
「どこ行くの」
不意に後ろから手首を掴まれた。
軽くよろめいて、久保ちゃんの腕の中。
そして自分が良く知る、セッタの匂い。
「あー、久保ちゃんだー」
「何それ」
久保ちゃんが呆れたように笑う。
「もう帰るよ」
お前放っておいたら、何処に行っちゃうか分かんないし。
子供みたいにしっかりと手を繋がれた。