一枚硝子

例えば、一枚硝子の向こう側とこちら側。
近くに居ながらその距離は酷く遠い。

「お前、最近元気ないね」
「……そうか?」

気の所為じゃねーの。
久保ちゃんにそう返して、吐き出したい溜め息をコーヒーと一緒に飲み込む。

「そ?なら良いけど」

何かあったら言いなさいね、と片手間のように髪を撫でて立ち上がる。
その手の温もりを求めてる、なんて。

「言える訳、ねーじゃん」

窓硝子に映る久保ちゃんの離れてく後姿を眺めながら、今度こそ溜め息を吐いた。