パンダ

「何それ」
「パンダだろ」
「うん、パンダだけどね」

俺が訊きたいのは、そーいう事じゃあ無いんだけど。
時任の膝の上を陣取った、それ程大きい訳でも無い、けれど両手で支えてなければ転がり落ちてしまいそうなそれは、何処か間の抜けた顏をしたパンダのぬいぐるみ。

「可愛いだろ、久保ちゃんみたいで」
「それ、俺なの?」
「似てるじゃん。この起きてんだか寝てんだか分かんない辺りが」

そう言って無遠慮にパシパシとパンダの頭を叩くのを見て、不覚にも痛そう、なんて思ったのはやっぱり時任に「似てる」と言われて妙な親近感を持っちゃった所為かな、なんて。

「まあ、お前が楽しいなら何でもいいけどね」

その内、時任が飽きてその辺に転がる事になったその時は。

「……やっぱり可哀想かもなぁ」
「何が?」
「何でもないよ」

今はまだ時任の膝を独占してるパンダに目を向けて笑った。