スッと手を伸ばすその先は……

【Can You See ?】

「何してるの?」

読んでいた本を閉じて、視線を向けた先には時任が居て。
その手には俺のメガネ。

「それ、無いと見えないんだけど」
「だって、メガネ掛けてたら見えないじゃん」
「掛けない方が見えないと思うんだけど?」

取り返そうと手を伸ばしたら、軽くかわされて。

「そうじゃなくて、俺がさ」

互いの動作が止まり、視線が交わる。

「久保ちゃんの目にちゃんと俺が映ってるか見えないじゃん」

少し拗ねたような物言いとは裏腹に、その瞳は楽しげで。

「じゃあさ、確かめてみる?」

手招きして、近づいた時任を抱き寄せる。
腕の中の時任を見つめれば、その目は無意識の内に閉じられて。
誘われるように、ゆっくりとその唇にキスを落とす。

「ちゃんと見えた?」

何も言わないけれど。
仕返しのようなキスを仕掛けてきた、きっとソレがキミの答え。