go on

「なぁ、久保ちゃんの願いって何?」
「どうしたの?突然」

時刻はもうすぐ日が変わるか、という頃。
ゲームに飽きたらしい時任が、コントローラーを床に放り出しながら何の前触れも無くそう切り出した。

―ああ、何か嫌な予感がするなぁ

しかも悲しい事に、そういう予感程良く当たる、という物で。

「ヒント。俺がいつまでも気付かない思ったら大間違い」

時任が欠伸をしながらそのままソファーに凭れかかる。
目を擦るのを止めさせながら、「眠いなら寝たら?」と髪を撫でれば誤魔化すな、と手を振り払われた。
自覚があるだけに、苦笑しか浮かばない。

「だって久保ちゃん、何も言わねーんだもん」
「うーん、態度には出してるつもりなんだけどなぁ」
「態度だけじゃ伝わんねーの」

時任がこの手の話にここまで食い下がるのも珍しい。
いつもならばどちらともなく話を逸らしてそれでオシマイ。
言葉遊びのような攻防を繰り返すばかりなのに、今日に限って何でまた。

「……聞いたら後悔するかもよ?」
「そんなの聞かなきゃ分かんねーじゃん。後悔したかどうか決めるの、どうせ俺だし」

態度には出してたとは言え、いつも逃げていたのは実は俺の方なのかもしれない。
一歩でも踏み出したら、もう後戻りは出来なくなりそうで。
押し黙る俺に、時任が諦めた様な溜息を吐いた。

「残念、時間切れ」

次の瞬間、不意に時任が抱き付いた。
体重を掛けられた勢いでソファーに押し倒され、俺の上に覆い被さった時任が、にっと強気に笑う。

「ハッピーバースデー、久保ちゃん」

Happy Birthday!