電車の中

目的地は特に無い。
ただ、時任が「電車に乗りたい」と言ったから。
じゃあ、乗りに行こうか、と二人連れ立って気儘に各駅停車の旅。
平日昼間の車内は乗客も疎ら。
単調なリズムに時任はすっかり寝入って。
ゆらゆらと落ち着きない時任を何と無く眺める内に芽生えたのは、ほんのイタズラ心。

「ときとー」

小さく声を掛けても返ってくるのは静かな寝息。
知らず笑みが深まる。

「唇は不味いよね、流石に」

時任を肩に寄り掛からせる、ほんの一瞬に。
鼻の頭にキスをした。

お題:電車の中で、笑いながら鼻の頭ににキスをする久保時をかきましょう。