blossom

食べる物はスニッカーズにカロリーメイト。
飲料水代わりにジンジャーエールとポカリスエット。
暇潰しに新しいゲームを数本、それから最近覚えたコミック雑誌。
把握している中であいつの好きな物は目に付く場所に全部置いてきた。
それなのに。

「何で居ないかなぁ……」

まだあると思って開けた煙草が実は最後の一箱で。
散歩がてらコンビニに行かない?と声を掛けた同居人はソファーでクッションを枕にお昼寝タイム。
寝てるのなら無理に起こす事も無い、とそっと出かけて帰ってくるまでその間、僅か十数分。
ようやく慣れてきた、と思ったのに。

「居なくなるなら、いっその事何も残さないで行って欲しかったかも」

歪な形のまま放り出されたクッションも、出かける前に掛けていった毛布も。
今の今までそこに「居た」形跡が、返って「居ない」事を強く知らしめるようで。
抜け殻のようなソファーから目を背けて、ぼんやりと買ってきたばかりの煙草の封を切り火をつければ。

「〜久保ちゃんっ!」

玄関の方から荒々しい足音。
その勢いのままリビングのドアが開く。

「……どうしたの?」
「どうしたの、じゃねーよ!お前が、もう帰って来ないみたいな事しやがるからっ」

紛らわしい事してんじゃねーよ、と力が抜けたようにソファーにどさりと腰を下ろす。

「ごめんね」

ご機嫌取りは逆効果だったみたい。