drowning

最近、久保ちゃんの様子が変だ。
元々何を考えているのか分からないトコはあったけど、その行動の裏には必ず何かしらの意味があったりする訳で、そーいう所は割と単純で分かりやすい。
だから、ただ何も言わずに俺を閉じ込めるみたいに、そのくせ簡単に振り解けるような弱い力しか込められていない腕に抱き締められると、どうして良いか分からない。

「……久保ちゃん」
「いや?」

いや、では無い。
嫌では無いのだけれど。

「分かんね」
「そう」

そうやって、何処かほっとしたような顔をするから。
ぬるま湯に浸かってるみたいに、抜け出せなくなる。

「だったらもう少しこのまま、ね」
「何だそれ」

それならばいっそ、何も考えなくてもいいように。
溺れさせてくれればいいのに。

【drowning】溺死