since 2005年8月12日
うーん、ちょっと遅くなっちゃったかな?
―ちょっとセブンまで行ってくるね。
そう時任に言い残して家を出たのが21時頃。
ケータイの時刻表時は既に22時。
家を出てから優に一時間が経っていた。
さすがに連絡ぐらいしないとマズイよね?
時任になんて言い訳しようか、と考えながらケータイのボタンを押すと。
『遅せーよ、久保ちゃん!』
「うん、ごめんね?」
少しの間も置かず、すぐに電話に出た時任に笑い出したくなる。
もしかして、ずっと手にケータイ持ってたの?
俺からの電話にすぐ出られるように。
だとしたら。
『なに笑ってんだよ』
「べつに?何でもないよ」
かわいいな、と思ったけどこれ以上拗ねられても困るから、そこは適当にはぐらかす。
うん、拗ねた時任も可愛いんだけどね?
『ぜってー嘘だ』
「そんな事ないって。あ」
『なに?』
「外、出てみなよ」
『外?ベランダでいいのか?』
「うん」
ケータイの向こうで時任が動く気配がする。
ほんの少しの間を置いて、ガラガラと窓を開ける音が聞こえた。
『出たぞ?』
「上見てみな?」
『上?……すげー、満月じゃん!』
「ね、キレイっしょ?じゃあさ、今度は下見てみよっか?」
『下?……って、久保ちゃん!?』
時任の驚き様に、今度はさすがに堪えきれずに笑い出した。
「おまえ、ほんと面白いわ」
『ずっとそこに居たのかよ!?』
「いや、今帰ってきたとこ」
『んな所に居ねーで、さっさと上がって来い!』
「りょーかい」
帰りましょーか。愛しの猫の元に。
「開けて、時任」
「おせーよ」
ドアを開けた時任はやはり不機嫌そうで。
だけど。
「おかえり」
いつもそうやって出迎えてくれるから。
「ただいま」
きっと、この言葉が言えるんだ。