The rest incense

「ただいまー」
「おかえり。遅かったね」

時任が目の前を通り過ぎた時、ふわりと感じたのは。
自分のものとは違う、嗅ぎ慣れない煙草の匂い。

「時任、お前、誰かと一緒に居た?」
「ああ、滝さんに会ったからさ。コーヒー奢って貰った」
「ふーん……」
「久保ちゃん?」

不思議そうに首を傾げるその肩口に、額を乗せる。

「お前が他の男の匂い付けて来るの、気に入らない」
「……ばっかじゃねーの」

くん、と小さく鼻を鳴らして。
良く知る時任の匂いで肺を満たした。