その気が無いからつまらない

「……で?」
「でって?」
「何で俺が押し倒されてんだよ」
「上が良ければ上で動いてくれてもいいよ?」

昨夜みたいに。
そう笑いながらそろりと首筋をなぞる久保田の手にうぜぇ、と呟き視線を逸らす。

「あれ、抵抗しないんだ?嫌なのに」
「ていうか、嫌って分かってんならそこ退けよ」
「んー?やだ」

やだ、じゃねえよ何処の餓鬼だコイツ。
蔑んだ視線を物ともせず、相変わらず微笑んだまま、人を押し倒した割りにいっそ穏やかとも言えるような、何処か間延びした口調で続けた。

「だって時任、本当に嫌だったらとっくに俺なんか簡単に跳ね除けてるっしょ?」

―それってつまり、まったく気が無い訳でも無いって事だよね。
そこまで分かってるなら、初めから抵抗だとか何とか回りくどい事言ってんじゃねえよ、ムカつく。

「シたいならすれば?多分、俺はのらないけど」

それでも良ければ好きにどうぞ?なんて。

「なんかお前、だんだん俺に似てきたねぇ」

感情や思惑を全て内側に封じ込めて、表面だけを取り繕ったような完璧な笑みを浮かべた。