いつも出て行く時任を見送っては、二度と帰って来る事は無いといつも勝手に思ってた。
それでも。

「ただいまー」
「お帰り」

いつの間にか、帰って来る事が当たり前になった。
だからこそ、疑問に思う事もある訳で。

「ねえ、前から気になってたんだけどさ」
「何が?」

時任の視線はテレビに集中。
それでも聞いてくれる気はあるようで。

「なんで俺が出掛けてる時にはお前、外に出ないのかなーって。鍵、ちゃんと置いてってるでしょ?」
「あのなぁ、久保ちゃん」

振り返った時任は、何処か呆れ顔。

「久保ちゃんが帰って来る前に俺が鍵閉めて出掛けたら、誰がお前にドア開けんだよ。つーか、それぐらい考えろよな」
「……うん、そーね」

それって、お前が必ず俺の為にドアを開けてくれるってこと?なんて。
期待してみたり、なんかして。

「ねえ、時任」

再びテレビに意識を向けた時任はもう振り返らない。
―明日は合鍵、作りに行こうか。