昼寝

目が覚めると家中、何処もかしこも真っ暗で。

「時任?」

寝起きのはっきりとしない頭で、訳もなく不安にも似た焦燥感に駆られるまま、リビングまで足を進める。
柄にもなく震えた指先が触れた電気のスイッチを押せば。

「〜久保ちゃんっ、眩しいって……」

ソファーの上で毛布の固まりがもぞりと動き、そっと安堵の息を吐く。

「……寝るならベッドで寝れば良かったのに」
「だって久保ちゃん、あんまり気持ちよさそうに寝てたからさあ、」

起こせなくて。
そう、まだ眠気の抜けきらない柔らかな声にひと言、ごめん、と返す。

「つーかなに、もう夕方?」
「もうすぐ夜だけどね。夕飯、何にしよっか」
「俺、カレーはもうやだかんな」
「んー、じゃあまずは買い物?」
「しょーがねーな、俺も付き合ってやっか!」

凝り固まった身体を解す様に思いっきり伸びをして。

「行こうぜ、久保ちゃん」
「……うん」

当たり前のように差し出された手を取った。

昼寝から目が覚めたら真っ暗とか、不安になったりしませんか。