滑稽な悪夢

いち、に、さん、し、ご。
そこまで数えた所で、残りは敢えて無視をした。

「こんなに買って来て、どうしたの?」
「こんなにって、たったの12個だろ?」

時任の言葉は正しい様で、実は大きく間違ってる。
1パック3個入り、それが12個という事は。

「……つまり36個ある訳ね」
「残りは35個だぞ。俺が今いっこ食ったから」

テーブルに放置されたままの空になったカップとお皿とスプーン。
そして、それらを前にご満悦な様子な時任。
交互に眺めて、なるほど、と頷く。

「で、残りはどうするの?」
「食うに決まってんじゃん」
「誰が?」
「久保ちゃんが」
「うん、言うと思った」

肩を竦める俺を余所に、時任がまた一つ、プリンに手を伸ばす。
蓋を引き剥がして、逆さまにしながらお皿の上に。

―プチンッ

「おお、スゲー!」
「時任さあ、それがやりたくて買ってきただけでしょ」

俺の声などまるで聞こえていないとでも云うように。
恐る恐るとカップを取り上げた瞬間に時任が浮かべた満面の笑みに、まぁいいか、と。
また一つ増えたプリンのカップをゴミ箱に放り込んだ。

―で、何で賞味期限ギリギリなのばっかり買ってくるかなぁ……
―え、だって安かったぞ?

時任は地味なモノに嵌りそうだと思ったそんな夜にハッピーハロウィン