安眠誘導

「さむっ……」

朝、冷え込む空気にベッドの中の時任は無意識に隣に居る温もりの持ち主に擦り寄った。
だが、

「……久保ちゃん?」

そこに求めた温もりはなかった。


ガチャ−

「あれ、時任もう起きたの?」

ドアを開ける音に振り向けば、まだ寝てると思っていた時任が手に毛布を持って立っていた。

「…………」

なんか機嫌悪いねぇ。
昨日、あまり寝かせてあげられなかったからかな?
だから、せめてベッドを広く使わせてあげようかと思って、早く起きたんだけど。

「久保ちゃん。ちょっと、こっち座れ」

そう言って時任が指差してるのは、今俺が座ってるソファーの端。

「なんで?時任も十分座れるでしょ?」
「いいから!」
「はいはい」

これ以上、時任の機嫌が悪くならない内に俺はソファーの端に体をずらした。

「これでいい?」

時任は何も言わず、まだ不機嫌そうな顔のままソファーに寝っ転がり、毛布を被る。
そしてその頭は俺の膝の上。

「時任?」
「うるさい。俺は眠いの」

あら、相当機嫌悪いみたい?
どうやって機嫌直して貰おうかな。

「勝手に居なくなるなよ。落ち着いて眠れねーだろ」
「うん。ごめんね?」

頭を撫で、毛布を掻け直してやると不機嫌だった時任は満足気に表情を和らげ目を閉じた。

「おやすみ」