たまにはこんな日も

ある晴れた日の昼下がり。

「ん……久保ちゃん?」
「おはよ、時任。やっとお目覚め?」

時任は久保田の言葉を受けて時計を見ると、その時刻は12時を少し回った所だった。

「えっと、寝たのは2時ぐらいだから……なんだ、10時間しか寝てねーじゃん」
「はいはい。10時間も寝てたのね。朝ごはん食べる?時間的には昼ごはんになっちゃうけど」
「……食う」
「じゃ、用意するから待ってな」

時任は何だか腑に落ちない様子だったが、空腹感に負け大人しく久保田が食事の支度を終えるのを待っていた。

「なんか、飯食ったらまた眠くなってきた」
「時任、もしかしてまだ寝るつもり?」
「いいじゃん、眠いんだから。せーりてきよっきゅうってのに逆らうと病気になるって前テレビで言ってたぞ」
「生理的欲求でしょ?じゃ、俺も素直に従っちゃおうかな。病気になりたくないし。ね、時任?」

久保田はそう言うと、隣に居た時任を抱き寄せた。

「ちょっ、俺はそういう意味で言ったんじゃないって!」
「冗談だって。で、なに寝る体勢に入ってるの」

時任は久保田に抱き寄せられた格好のまま、目を閉じていた。

「眠いから……」
「お前は寝過ぎて病気になっちゃうんじゃないの?」
「なら、久保ちゃんも一緒に寝ろ。俺一人が病気になってたまるか」
「寝ろって言われても、俺今日バイトなんだけど?」
「休め」
「夜ごはんの買い物は?」
「どうせ昨日のカレーが残ってるだろ」

時任は何が何でも俺を一緒に寝かせるつもりらしい。
まあ、せっかくの時任からのお誘いだし?
下手に断ったりして機嫌を損ねるのも得策じゃないし。

「わかった。このまま寝ちゃおうか」

時任は嬉しそうに笑うと、今度こそ眠るために目を閉じた。

「おやすみ、久保ちゃん……」
「おやすみ、時任」

すぐに隣から聞こえだした寝息に久保田はつくづく時任に甘い事を自覚して苦笑した。

「たまにはいいかもね」

久保田は隣で眠る時任に優しい目を向けると、そのままゆっくりと目を閉じた。