ユメチガエ

真夜中。
夢見が悪いのか、隣で眠る時任の呼吸が荒い。
それに気付いていながらも俺は決して時任を起こす事はしない。
時任自身も、それを望んでいない事が分かってるから。
時任はいくら辛い思いをしても決して逃げたりはしない。
だから俺に出来る事は、ただ手を握ってやるだけ。

「久保ちゃん……」
「おいで、時任」

その代わり、自力で悪夢を脱した時には思いっきり甘えさせて、甘やかす。
よく頑張ったね、と言う代わりに髪を撫でて。
もう大丈夫だよ、と言う代わりに抱きしめて。

「眠れそう?」
「うん…」

俺には過去の傷を消す事など出来ないけど。
現在の傷を癒す事ぐらいなら出来るかな。

「おやすみ」
「おやすみ」

過去も現在も未来も全部、お前ごと抱きしめてあげるから。
だから今だけはゆっくり眠って。