缶コーヒーの行く末

何となく、だった。
ただ目に付いたから。
そんな理由で俺は自販機でブラックの缶コーヒーを買った。

「珍しいね。お前がブラック飲むなんて」
「うん。でも、もういい」
「もう飲まないの?」
「いらない」

まだ半分も飲んでないけど、苦くてとても飲めたもんじゃない。
何でこんなのを飲めるヤツが居るんだ、と半ば八つ当たり気味に
飲みかけの缶コーヒーを久保ちゃんの方に押しやった。
久保ちゃんは「しょうがないねぇ」なんて言いながら
俺の飲みかけのコーヒーをキッチンへ持っていった。

捨てちゃうのかな、アレ。
飲みはしないけど、何だかもったいない気がする。

「はい」

しばらくして久保ちゃんが2つのカップを手に戻ってきた。
そして、その内の1つを俺に渡す。

「なにこれ?」
「カフェ・オレ」
「これ、さっきのコーヒー?」
「そう。これなら飲めるっしょ?」

結構残ってたから俺も飲めるしね、って言いながら自分のカップに口を付けた。
それに釣られるように俺もカップの中身を飲む。

「うまい……」
「そう?よかった」

前言撤回。
やっぱりブラックの缶コーヒーは悪くない。