evening

久保ちゃんと放課後の巡回をしていたら、何を思ったのか突然人の気配の無いトイレに連れ込まれた。
こんなムードもクソもあったもんじゃない場所でキスされて、噛み付いてやらない自分を褒めて欲しい位だ。
だからこんな窮屈な場所で無理矢理制服の裾を割り入って忍んだ指先がいくら皮膚を這いずり回ったって不快感が先行するだけだ。
はっ、と思わず溜息を漏らすと何を勘違いしたのか頭上でクスリと小さな笑い声が聞こえた。
ムカつく。
再び唇を塞ぎにきた久保ちゃんのソレを片手で押し退けて、勢い余ってドアが激しく音を立てる。

「あれ、なんか気に障った?」
「バッカじゃねーの?つーか、家まで待てねーのかよこの万年発情期野郎」
「ふーん、じゃあ家でならシていいんだ?」

この男、いけしゃあしゃあと。
ドアを背にしたまま楽しそうに笑うその態度に思わず舌打ち。

「ねえ時任、家でなら良いの?」
「うるさい黙れ」

そしてサッサとそこを退け。
そう、気持ちを込めて睨み付ければ。

「じゃあ、早く帰ろっか」

あっさりとドアを開け、何事も無かったかのように先に歩き出すその足を思いっ切り蹴り付けた。