paranoia

向き合う滝沢の上に股がる時任は酷く淫らだった。
時任が動くのに任せ時折掴んだ腰を軽く下から突き上げれば濡れた瞳が滝沢に絡み付き、甘い声を漏らす。

「気持ちイイ?」
「んっ、良くな、い」

それは今の時任の状態を表すには一番、不釣り合いな言葉。
だが滝沢はその答えに満足そうに笑った。

「だよねぇ。だって俺はくぼっちじゃないし?」
「あ、滝さ、」

身体の中で一番敏感な箇所に、滝沢の指が絡み付く。
同時に深く突き上げられ自分の慣れたソレでない刺激と感覚に、時任は背を大きく撓らせ呼吸を乱したその時、突然、部屋に鳴り響いた電子音。
それまで情欲に濡れそぼっていた時任の瞳に、ふと夢から覚めたような正気の色が戻る。
左手が音の発信源であるベッドの枕元を探り、やがて目的のものに指先が触れると、ちらりと表示された名前を確認し、再びベッドに放り出した。

「あれ、いいの?」
「いい。それよりも続き、シよーぜ?」
「あーあ、知らないよ?くぼっちが怒っても」

滝沢の言葉に時任は喉の奥だけで笑うと、噛みつくように耳元に唇を寄せ、

「何なら電話、今度は出てやろーか?」

甘い声で酷く険悪な言葉を囁いた。
その時、再度時任のケータイが鳴り響く。
にやり、と時任が笑いケータイに手を伸ばすが、ソレが手に届くよりも前に滝沢によって乗り上げていた身体をベッドへと押し戻されてしまう。

「続き、するんでしょ?」

滝沢の唇が首筋の辺りに落とされる。
拒む事なく受け入れれば、覚えのある瞬間的な痛みに艶やかな笑みを浮かべ、久保田のとは違う、知らない煙草の匂いが染み付いたシーツに溺れた。