revenge

「何のつもりだよ」

深夜―
時任はベッドに横たわる自分を楽しそうに見下ろす久保田を睨みつけた。

「何って、時任が俺にいつもしてる事っしょ?それとも、」

久保田が更に近付き、時任の上に影を作る。

「前に俺に飲ませたのと同じ薬を飲まされて、自分がしたのと同じようにベッドに縛り付けられられてるんだよ、って教えてあげた方がいいのかな?」

耳元で吐息と共に囁かれた言葉に、時任の肌がぞくりと粟立つ。

「ここまで言えば、あとは……分かるよね?」

久保田の冷たい手が同じく冷たい笑みと共に時任の頬に添えられる。

「それで?」
「ん?」
「そこまで俺様を真似ておいて、まさか自分だけ楽しもうって訳じゃねーよな」

時任は、相手が誰であろうと自分がペースに巻き込まれるのを良しとしない。
ならば、この状況を自ら楽しむのも悪くないかとすぐに自分のペースを取り戻したように久保田を見上げ口角を吊り上げた。

「ふーん。強気だね」

そんな時任の様子を見て、久保田もまた笑みを深くする。

「そんなに楽しませて欲しいならさ、少しは可愛らしく媚びて見せたらどう?」
「は、冗談じゃねえ誰がお前なんかに」
「ああそっか。時任は抵抗された方が楽しいんだっけ?」

忘れる筈も無いのに、今思い出したと言わんばかりの久保田の態度が腹立たしい。
そんな態度はおくびにも出さず、時任はにこりと微笑んでやる。

「残念だったな、お前に媚びさせるだけの技術が無くて」
「べつに?嬉しいなー俺は時任にただ弄ばれて終わる、可哀想なその他大勢じゃないって訳だ」
「ま、折角ここまでしたんだから好きにしろよ。俺は心広いから、今日くらいは大人しくヤられやってもいいぜ」
「ここで放り出されたくないだけでしょ?素直に物を頼めない性格って損だよねー」
「お前こそいい加減諦めろよ。どーせお前なんかに俺の真似なんて出来ないんだからさ」
「あれ、誰が時任の真似なんて言った?」

不意に久保田が時任からその身を離し、視界の陰に手を伸ばす。
久保田の突然の行動を怪訝そうに目で追った時任の顔色がさっと変った。

「この、卑怯者!」
「ここまでしたんだから、好きにしていいんでしょ?」

足をばたつかせながら暴れる時任を難なく抑え込み、久保田は手にしたネクタイで時任の視界を塞ぐ。

「やめろ、この変態っ!」
「あーお前の言う通り。確かに抵抗された方が面白いかもね」

心底愉快そうな久保田の声に、時任の抵抗がピタリと止む。
本人なりに反抗してるつもりだろうが、拘束され目隠しをされた状態では何の意味も無い。

「そんな事してもだーめ。やめないし、離さないよ」

今夜は、俺が楽しませて貰う番なんだから。