ハニーミルク

ガチャ―

「久保ちゃん?」

久保ちゃんは、たまにおかしくなる。
それは例えば、今日のような雨が降る夜。

「どーした?」

珍しく俺よりも先に寝室に引き上げた久保ちゃんが、リビングに戻ってきて。
俺の目先で突っ立ったまま動かない久保ちゃんの手を掴んで、引き寄せながらソファーに座らせる。

「何か飲むか?」
「……うん」

頷いてから、縋るような眼差し。

「何処にも行かねーから」

しっかりと目を合わせながら、静かに言い置いて。
冷蔵庫から、冷たい牛乳。
こーいう時だからこそ手を抜かずに、時間をかけて小さい鍋で温める。
ちらりと見た久保ちゃんは相変わらず、ただぼんやりと空を眺めてた。
それが何だか、妙に癪に障って。
温まった牛乳に、これでもかって程のハチミツを入れて掻き混ぜた。