since 2005年8月12日
ガチャ―
「久保ちゃん?」
久保ちゃんは、たまにおかしくなる。
それは例えば、今日のような雨が降る夜。
「どーした?」
珍しく俺よりも先に寝室に引き上げた久保ちゃんが、リビングに戻ってきて。
俺の目先で突っ立ったまま動かない久保ちゃんの手を掴んで、引き寄せながらソファーに座らせる。
「何か飲むか?」
「……うん」
頷いてから、縋るような眼差し。
「何処にも行かねーから」
しっかりと目を合わせながら、静かに言い置いて。
冷蔵庫から、冷たい牛乳。
こーいう時だからこそ手を抜かずに、時間をかけて小さい鍋で温める。
ちらりと見た久保ちゃんは相変わらず、ただぼんやりと空を眺めてた。
それが何だか、妙に癪に障って。
温まった牛乳に、これでもかって程のハチミツを入れて掻き混ぜた。