2月3日、晴れ

「やってられないな……」

通年優等生で通っている自分が授業の一つや二つをサボったところで誰も文句など言えはしない。
そう考えた治が息抜きにと屋上のドアを開けた、その時―

「鬼は外ー」
「っ、」

計ったようなタイミングでそんな言葉と共に一握り分程の豆が治に向かって投げ付けられた。

「龍之介……」
「はは、だっせーなちゃむ!」
「まさに鳩が豆鉄砲食らったって顔だったぜー今の!」

治に豆を投げ付けた張本人である龍之介と隣で煙草を吸っていた修司が、腹を抱えんばかりに笑い出す。
治は黙って足元に落ちていた豆を一つ拾い上げると、未だに笑い続ける龍之介の顔に向けて指で弾き飛ばした。

「いってーな、何しやがる!」
「仕返しだ。有り難く受け取れ」

それは狙いを逸れる事無く龍之介の額に命中した。
そして、それを見てまた笑い出した修司にも同じく狙いを向ける。

「ちょっと待て!俺は何もしてねーじゃん!」
「連帯責任だ」

逃げ出す修司と、逃げ出した修司を追う治。

「お、なんだ今度は鬼ごっこか?」

それに何故か龍之介が加わり。
三人の騒がしくも賑やかな声が冬の空に響き渡った。