spelling

英語の授業としては珍しくもない、英単語の小テスト。
授業直前の休み時間になると、ソレは必ず見る光景―

「久保ちゃん、次!」
「次ね、『静けさ』」
「静けさ……サイレンス?」
「そう。書ける?」

瞬間、考えるように宙を睨む。
が、すぐに思い出したらしく、広げられたノートにペンを走らせた。

「silence.あってるか?」
「うん、正解」
「よっしゃ!久保ちゃん、はやく次!!」

急かす時任に、わざとらしいほど嘆かわしい、大きな溜め息をつく。

「はぁ。時任ってば、昨日も寝てない俺をそんなに扱き使うんだ。酷いよね、俺はこんなにお前を大切にしてるのに。っていうか、寝かせてくれなかったの時任なのに……」
「そ、それは久保ちゃんがっ!」
「俺が?」

首を傾げて時任を見ると、途端に真っ赤になって俯く姿に笑みを深くした。

「時任、俺がなーに?」

―あ、手が震えてる。

「うるせー!いいから次いくぞ、次!!」

やっぱ怒った時任も可愛いなーと思ったけど、テストが出来ないのも、かわいそうだしね?

「はいはい。じゃあ、『集める』」
「コレクション!」
「ちゃんと書ける?」
「んなの、簡単じゃねーか」

自信満々、というように単語がノートに綴られる。

「correction.」

―あれ?

「時任、それ違う」
「うそ、どこ?」
「rrじゃなくて、ll」

時任が書いた単語の下に、collection.と正しく書いた。

「あ、そっか。サンキュ」
「時任……」

時任は再びcollection.と正しいスペルを覚えるようにノートに書き込んだ。

「夜が楽しみだね?」

久保田の楽しげな言葉は幸いにも勉強に必死な時任には届かなかった。

[correction]コレクション:罰