ルーズリーフ

珍しいこともあるものね。
桂木は、今朝から何度目とも知れない事を再び思った。
執行部の公務が無ければ、ほとんど寝に来てると言っても過言でない久保田君が珍しく起きていて、授業のノートを取っていた。
ただ、普段ノートを取らないせいか、使っているのはルーズリーフ。
反対に、いつも起きていて(意外にも)真面目に授業を受けている時任が居眠りをしていた。
本当に、2人ともどうしちゃったの?
そう思ってるのは教師も同じらしく、授業の合間に度々二人を見比べては首を傾げている。
珍しく寝ている時任と、珍しく授業を受けている久保田。
これじゃあ、怒るに怒れないでしょうね。
授業に差し支える訳でも無いし、いつもと構図が逆になっただけだと思えば、教師も大目にみようという気になるのだろう。
特に注意する事も無く、授業を終えた。

「時任」
「んー……?」
「ほい。これ今の社会ね」
「サンキュ。後で写しとく」

時任は受け取ると、そのままノートに挟み込んだ。
ああ、だからルーズリーフなのね。
もしかして、こうなる事を見越してたのかしら?

「じゃ、次数学な」
「時任、まさか今日はずっと寝てるつもり?」
「誰のせいだよ……」
「うーん、別に俺だけのせいじゃないと思うんだけどね?」

時任、何でそこで顔が赤くなるのよ!そして、久保田君の意味深な笑みは一体なんなのよ!

「と、とにかく責任持って俺様のためにノート取りやがれ!」
「はいはい。時任君のためにガンバリマス」

二人の間に何があったのかは知らない方がよさそうね。
まったく。あの二人のおかげで、今日は授業に集中出来ないじゃない。
やっぱり、有害だわ……