合法ドラッグ

「時任、早く飲んじゃいなよ」
「やだ」

さっきから、ずっとこの繰り返し。

「だって、そんな酷くねーじゃん」
「薬は悪化してから飲むんじゃ、意味ないの」

宥めても賺しても、時任は風邪薬を飲もうとしない。

「言うこと聞かないと、気絶させてでも飲ませるよ?」
「気絶させたら、薬飲めねーじゃん」
「あるよ?飲ませる方法」

何言ってんだ、と鼻で笑う時任の顎を掴み微笑を浮かべながら視線を合わせる。
「気を失っている人物に薬を飲ませるのには、『口うつし』が最も効果的な方法として昔から行われているんだよね。その方が確実に飲み込ませられるし?俺は どっちでもいいけど」

どうする?
首を傾げ、時任に選択を迫れば。

「……よこせ」
「はい、どーぞ」

渋々といった風に受け取った薬を暫く眺め、意を決したように口に含む。
すかさず渡した水を一気に飲み干し、はぁ、と大きく息を付いた。

「そうそう。始めからおとなしく飲みなさいね?」
「おまえ、今のぜってーわざとだろ!」
「さぁ、何のことかなー」

ていうか、そんな涙目で睨んでも全然威力はありません。
あ、時任、フテ寝しちゃうの?
ソファーで寝たら、余計に悪化すると思うけど。
まぁ、いっか。
おやすみなさい。
毛布は後で掛けてあげるね。