携帯電話

ジーパンのポケットで鳴り響いたケータイに、ビクっと足が止まる。
震える手で取り出すと、表示されてる名前は『久保ちゃん』

目にした瞬間、息が、詰まる。
指先が凍りついたように動かない。

その内に伝言サービスに切り替わり、ケータイが鳴り止んだ。
知らない間にずっと詰めてた息を吐き出してから、一呼吸。

大丈夫、大丈夫。
言い聞かせて、リダイヤル。

「あ、久保ちゃん?―うん、出ようとしたんだけど、間に合わなくてさ」

努めて明るい声を出す。
キリキリと痛む胃を誤魔化しながら。