髪の長い女

いつ見ても変わらない街並み。
青い空に薄汚れた灰色の街。そして色とりどりに着飾る人の群れ。
そんな奇妙なコントラストの中、私はあの二人を見つけた。

『誠人は誰のものにもならないよ』
私がそう言った時
『久保ちゃんのものは全部俺のものだ』
そう言い切ったアイツ

本当に見ていて気持ちいいくらい誠人にまっすぐで、自分に嘘つかない子。
悔しいけど、私じゃあの子には勝てない。
だって、ほら。
あの子を見る誠人の瞳が、あんなに優しいんだもの。
きっと、私じゃダメだから。
あの子でなければダメだから。
だから私は 喜んで身を引かせて貰うわ。
そんな愛があっても、いいんじゃない?