のどあめ

「ぜってー久保ちゃんのせいだ」
「だから、ごめんって言ってるじゃない」

咳き込みすぎて潤んだ目で睨まれる。
そんな風に睨んでもカワイイだけだ、って気が付いてないでしょ?

「久保ちゃんが煙草を吸わなきゃ、ここまで酷くなんねーだろ」

だから、悪かったって。

「これ、あげるから許してくれない?」

おいで、と手招きして。
煙草の代わりに口に入れていた飴を時任の口に移す。

「サンキュ……って、やっぱり煙草吸うのかよ!?」
「だって、飴は時任に取られちゃったし。口寂しいんだもん」
「ほかの飴は?」
「今のが最後の一つ」
「久保ちゃん」
「ん?」

取り上げられた煙草。
代わりに押しつけられた柔らかい口唇。
口の中にはさっきよりも小さくなった、のどあめ。

「半分返す」
「ありがと」