階段

執行部の公務である見回り。
二人並んで歩くのが常だが、唯一、そうでなくなる場所がある。

「ほら、久保ちゃんより背高い」
「ふざけると危ないよ?」
「平気だって!」

時任は階段を上る時、俺よりも2、3段前を歩く。
そして俺を振り返り、今のように楽しそうに笑う。

「やっぱり、時任が俺より背が高くなるのは困るなぁ」
「なんで?」
「だって……」
「久保ちゃん?」

階段を上り、また二人並んで歩きながら、隣を歩く時任の肩に腕を回し、そのまま抱き寄せる。

「こういう事が出来なくなるでしょ?」
「それ、困るの久保ちゃんだけじゃん」
「時任は困らない?」
「……困る」

心なしか赤くなった顔を隠すように俺の腕から抜け出し、走りだす。

「早く行こーぜ、久保ちゃん!」
「はいはい」

正義の執行部、今日も健在。